イギリスの田園が育むチーズ

イギリスの田園が育むチーズ

当店はヨーロッパから直接チーズを買い付けています。
そのどれもがチーズ職人たちのこだわりが詰まったナチュラルチーズ。

そのひとつひとつをじっくりとご紹介するため、これから複数回に分けてブログを書いてまいります。
今回の主役は当店の定番商品、イギリス直輸入のウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダー。
こちらはイングランド南西部Devon(デボン)州で14世代に渡り酪農家を営む、Quicke’s家から直接買い付けたものです。

ウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダーとは?

世界で最も多く作られているチェダーチーズ。
年間600万トンものチーズ生産量を誇るチーズ大国・アメリカで最も良く知られたチーズがチェダーだと言われています。
そのためか、チェダーチーズと聞くと薄くスライスされた黄色いチーズを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実はこれはレッドチェダーと言われるもので、鮮やかな色と風味付けに、アナトー色素が配合されたものです。

実はチェダー発祥の地はイギリス。
15世紀にサマセット州チェダーで生まれました。
チェダリングという、 カード(チーズの素になる乳固形物)を反転させながら積み重ねることでホエイ(乳清)を排出させ、最後にカードを小さな角型に裁断するという独特の工程を経て作られるのが特徴です。
緻密でホロホロと砕ける食感はこのチェダリングによって生み出されます。

その後塩やアナトー色素を加え、直方体に成形されて真空包装されるのが工場製のチェダーですが、伝統的なチェダーはモスリン(木綿や羊毛などの梳毛糸を平織りにした薄地の織物)で包まれ、最長で2年間じっくりと熟成されます。
その間に発生するチーズ表面のカビがチーズに独特な味わいをもたらすのです。

こうした伝統製法のチェダーを生み出す農家は今やイギリスに十数件の農家のみ。
ウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダーとはその名の通り、イギリスののどかな田園風景の中で生まれた、農家手作りのチェダーチーズなのです。

Quicke’sのこだわり

Devon州の赤土と穏やかな雨によって育まれた青々とした牧草。
Quicke’s家の牛たちは放牧され、フレッシュな牧草を食べて育ちます。
搾りたてのミルクは天然由来のレンネットで凝乳化され、チェダリングの工程へ。この工程は 9人のチーズ職人の繊細な手作業で行われています。
その後丁寧にカットされたカードは均質なチェダーを生みます。
加塩に使用するのはヨーロッパの一流シェフも愛用するコーニッシュソルトです。
その後モスリンでひとつひとつ手包みされたチーズは、’nursery store(育成蔵)’と呼ばれる伝統的な木製棚で最初の熟成を始めます。
それから3カ月経つと、より湿度の高い‘Cathedral of Cheese(チーズの大聖堂)’と呼ばれる冷暗所へと移され、最長2年間、10日に1度回転させながら、チーズは更なる熟成を続けるのです。
この間、チーズ表面にはカビが発生し、様々な風合いを生み出します。表皮近くの西洋ワサビにも例えられるピリリとした味わいが、Quicke’sのチェダーの特徴です。

Quicke’sのチェダーは熟成度合いによって様々な味わいを楽しめます。
若いものは口に入れた瞬間、牧草の香りが鼻いっぱいに広がり、ミルク本来の旨味と余韻が楽しめます。
熟成が進むほどに味わいはまろやかに。熟成で生まれた複雑な風味とキャラメルの様な濃厚な味わいが楽しめる、見事な逸品です。

イギリスの伝統が紡ぐチェダー

今回は当店が自信を持って仕入れたQuicke’s家のウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダーをご紹介しました。
こちらのチーズは当店ECサイトでもご購入いただけます。
熟成期間の違う3種類のチェダーをご用意しておりますので、味比べをしてみるのも楽しいかも知れません。

次回以降も当店自慢のチーズたちをご紹介していきたいと思います。
ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました。


  • Quicke’s ホームページ https://www.quickes.co.uk/
  • 雪印メグミルク「-チーズを知る- Academy-」 https://www.meg-snow.com/cheeseclub/knowledge/jiten/term/cheddar/
  • 一般財団法人 蔵王酪農センター「ナチュラルチーズ製造技術マニュアル」https://www.zao-cheese.or.jp/manual/nat_mak/mak_che/mak_che_mak03.html