職人チーズってなに? その2

職人チーズってなに? その2

前回は、日本でも良く見かけるようになったナチュラルチーズの中にも、
工場で効率よく生産され比較的お手頃に楽しめる「工場チーズ」と、
伝統製法にのっとり職人の手でひとつひとつ手作りされた本格派の「職人チーズ」があることをお話しました。

ですが実際のところ、全てのナチュラルチーズをこの2つのカテゴリに分けるのは難しいと言えます。
職人チーズの生産数を一定数確保しようと思うと、あらゆる工程から機械を排除するのはあまり現実的とは言えません。
また、工場チーズであっても一切のこだわりなくチーズを製造しているという訳でもありませんよね。
職人チーズ、工場チーズの製造には一長一短があり、それぞれの強みを巧みに活かして今日のチーズが作られているのです。

今回はナチュラルチーズの製法についてより理解を深めていただくために、4つの生産カテゴリーに分類してお話したいと思います。
4つの分類とは、大量生産工場チーズ、地域特産工場チーズ、職人チーズ、農場チーズ。
皆さんが食べているナチュラルチーズは一体どのカテゴリーにあたるのか、突き詰めてみるのも面白いかも知れません。

大量生産工場チーズ

大量生産工場チーズは、全ての工程が機械化された工場で製造されています。
原料の乳は複数の生産者から大量に集められ、低温殺菌したのち、コンピューター制御のもと一定の品質管理が行われます。
酸や酵素を加えて凝固させたチーズカードは大型機械プレスでホエイを排出し、熟成が完了した製品は即座に真空包装されます。

工場内で温度・湿度も徹底的に管理され、常に安定した環境下で製造されるため、味・食感ともに一貫したチーズが大量に製造できるのがメリットです。

地域特産工場チーズ

地域特産工場チーズは、原料の乳を地域生産者に限定し、適度に機械化された工場で製造されます。
牛の種類、さらには乳牛が食べる餌や環境がチーズの味に大きく影響するのは前回お伝えしました。
乳を集める地域を絞ることで、その土地固有の飼料や風土のもたらすミルクの味わいをチーズの中に活かすことが出来ます。
牛乳を10倍に濃縮して作られるのがチーズと考えれば、良く理解していただけますよね。

地域特産工場チーズはまた、その土地の伝統的なレシピにのっとって作られている場合が多く、香りや食感を損なわないよう厳格な品質管理を行っています。
熟成期間やパッケージ、ひいては味わいの点でも職人チーズに引けを取りませんが、残念ながら工場生産といった意味で真の「職人チーズ」とはみなされていません。
工場産と職人産の中間のような位置づけのチーズと言えます。

職人チーズ

職人チーズは、一人または数人のチーズ職人が伝統的な製法に基づいて作り上げるチーズです。
工房は機械化を最小限に抑えており、季節に応じたチーズ作りが行われているため、手に入らない時期も多くあります。
気温や湿度、牛乳の品質に応じて職人たちがデリケートな調整を行い、適切な衛生管理のもと作られるチーズは、昔ながらの蔵や洞窟でじっくりと熟成されます。
工場産のチーズではこれほど行き届いた繊細な管理はできません。
熟練の経験・スキル・情熱をもって作られる職人の手仕事。それが職人チーズなのです。
味わいは繊細かつ多様に変化し、私たちの舌を楽しませてくれます。

農場チーズ

農場チーズは、自ら所有する農場の家畜のミルクで作られたチーズのことで、「職人チーズ」の子カテゴリーとも言えます。
同じ敷地内に工房があり、外部生産者からのミルクは一切使用しない、100%自家製のチーズです。
乳牛の状態は農家さんが一番良く分かっているもの。牛の飼料から健康状態まできっちり把握している農家さん自らの手で作られる農家チーズは、品質にも信頼が置けます。
また、搾りたての新鮮なミルクを使ったチーズは格別です。

例えば当店で扱っているチェダーチーズは、イングランドのデボン州で酪農を営むQuicke家から直輸入したもの。
爽やかな牧草の香り漂うホワイトチェダーで、緑豊かなイングランドの田園風景に思いを馳せてしまいます。

まとめ

今回はナチュラルチーズの製法について、4つの生産カテゴリに分けてご説明しました。
大量生産できる工場チーズのお陰で、日本でもナチュラルチーズという存在がぐっと身近になったのは確かです。機械で徹底的に品質管理された食品には安心感もあります。
ですが、職人の熟練の技と経験で作り上げるチーズには、工場産には決して感じられない多様で奥深い味わいがあります。
ナチュラルチーズの美味しさを追求していきたいグルメな皆さんには、是非一度真の職人チーズを味わっていただきたいものです。

それでは皆さん、ここまで読んでくださってありがとうございました。